マーケットインとプロダクトアウト
最近、「いいものを作れば売れる時代は終わった。市場ニーズに合ったものを開発すべきだ。」
ということが言われる。
つまり、「プロダクトアウトからマーケットインへ」というわけだ。
しかし、必ずしもマーケットインが正しいやり方ではない。
マーケット、つまり顧客というものは商品のイメージを必ずしも明確に意識できているわけではない。
例えば、写メールは女子高校生を中心に爆発的にヒットしたが、これも、ユーザーである女子高生自身が「写メール」が欲しいという明確なニーズを持っていたわけではない。
当時の写メールの開発者が、女子高生のバッグの中身を見て、発想したのだ。
女子高生のバッグには携帯電話以外に使い捨てカメラ、MD、化粧品、鏡などが入っている。
携帯にカメラをついていたら良いと女子高生は発想していない。
つまり、「マーケットイン」と言って、消費者へアンケート調査などを行っても、
必ずしも有効でないということだ。
ひょうたんからコマ商品
この写メールようにマーケットインの発想で考えてとった戦略がヒットするものもあるが
開発当時、狙ったマーケットとはまったく違うチャネルで売れたもの、
別の意味で功を奏したものがある。
ここにいくつかご紹介したい。
白元のソックタッチ
もともとは男性用である。
紳士の靴下がずれないように考案されたスティックタイプの糊で、我々が高校生の頃、ませた同級生が使ったりしていたものだ。
当時、唇の荒れから保護するリップクリームとこのソックタッチと両方が流行り、間違って唇にソックタッチを塗った馬鹿がいる。
このソックタッチが、10年ほど前から、女子高生の必須アイテムとして復活し、白元でも生産が追いつかなくなった。
用途はルーズソックスである。
男性の方は良く知らないと思うが、女子高生向けの靴下売り場に行くと、セットでソックタッチが置いてある。
女子高生のルーズソックスというのはただルーズではいけないのである。
一番上のゴムの部分は必ず膝下にぴったりくっついていなければならないのだ。
そのためにこのソックタッチは女子高生必携のアイテムになったのである。
日産自動車のシーマ
当時、高級車市場でのシェア拡大を模索していた日産自動車は、高級車市場の購買層に対する市場調査を行った。
調査の結果、3ナンバー車購買層は、企業経営者、自営業者が90%を占め、年齢層は30代15%、40代44%、50代32%であった。
期せずして、シーマ発売後の購買層もこの通りだった。
ただし、ただ高級車だからヒットしたのではない。
シーマの場合、企業経営者には中小企業の経営者が多かった。
これは、経営者が運転手付で乗る車ではなく、自分で運転したいという気持ちの現れである。
また、当時はバブルの絶頂期であり、地価高騰で家が買えない購買層が代替品として高級車を求めるという追い風もあった。
その後、トヨタのセルシオに負けた、日産のインフィニティは惨めだった。
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