ミドルウェアを探せ!
また、社内に話を戻そう。
毎週、しらけながらも、パソコン委員会は開催されていた。
当時、私の仕事は、すっかり組合団体のインターネットサーバーを作ることに専念していたので、
社内にいることも少なかった。
それでも、わたしが何とか、パソコン通信からWEBのホームページに組合のシステムを切り替えて、
立ち上げたのは話題になっていた。
システム部門でわたしを蔑視していた奴は左遷されていた。
委員会では、相変わらず、社内のホームページ作成がうまくいかないという話題で終始していた。
ただ、わたしも冷ややかにイントラネットを眺めていただけではなかった。
組合のページの方も、もう少し機能を追加したかったし、
イントラネットで使えるアプリケーションをインターネットで探した。
我々営業部門に、システム部門のように情報投資の予算があるわけではない。
使えるお金はせいぜい数十万円までだ。
検索のスキル
インターネットを検索するスキルだが、わたしは自分のスキルはかなり高いと自負している。
子供の頃の成功体験が、そういうことへの向上心を植えつけてくれた。
まだ小さいお子さんをお持ちの方は、ぜひ、子供を褒める教育、子供のやったことに驚く態度をを実践してほしい。
幼稚園の頃、わたしの祖母が、電話帳を持ってきてくれた。ここにはいろんな人の電話番号が書いてあるという。
市町村別にアイウエオ順に並んでいた。
当時幼稚園児だったが、ひらがなとカタカナは読めたし、幼稚園の先生の苗字は、形だけ知っていた。
昔の電話帳だから、そんなに多くの名前が載っている訳ではない。まず、読み仮名で電話帳をたどる。
「相浦先生」と言った名前だからアの所にあるはずだ。すぐに見つかった。アイウラだから、ア行の先頭近くにあったのだ。
わたしは電話帳を指差し、祖母に、「これ、先生の電話番号?」と聞いた。
祖母は、大げさにびっくりして、よく見つけたねと褒めてくれた。多分、ア行の先頭にあったので偶然だったのだ。
得意になって他の先生を探した。次は井上先生。これもイ行である。苗字も読みやすい簡単な字だからすぐわかった。
複数の名前があったが、違っていようがそんなことは関係ない。祖母はまた褒めてくれた。
わたしは得意になり、次の日に幼稚園で先生に「電話帳で先生の電話番号見つけた。」と言った。
先生もまた驚いてくれたし、褒めてくれた。
この幼児体験は高校生まで続いた。高校の英語の辞書をいかに汚すかということが、勉強のバロメータになっていた。
皆、ガリ勉とは思われたくないのだが、なぜか英語の辞書だけはボロボロになるのが、かっこいいと思っていた。
でも、私の辞書は汚れない。単語を引くのに、アルファベットの位置を予測して、一発で開くことの確立が高いからだ。
わたしはそのことをみんなに自慢した。
ミドルウェア導入
話を元に戻そう。 さて、インターネットでイントラネット用のグループウェアを探した。
探してみると、掲示板、フォーラム、グループ用のスケジューラ、データベース検索、ファイルライブラリ、会議室予約など一連の機能を備えて、サーバーライセンスで20万円。
しかもクライアントフリーのWEB専用のグループウェアが見つかった。データベースはACCESSを使うという。
導入実績がまだ少ないらしく、社長さんが自らやってきて、詳細のデモをやってもらい、
使い勝手と設定の簡単さ(テキストファイルのパラメータ設定だけでカスタマイズできる)で導入を決定した。
翌日からすぐに、イントラネット上にカレンダーが表示され、会議室の予約やスケジュール管理ができるようになった。
これは当社にとってちょっとした事件だった。
何しろ、システム部門を差し置いて、一営業部門がイントラネットを動かし始めたのだから。
早速、情報システム部門は、わたしのところに来て、全社的に導入を決めた。
わたしと反目していた奴は左遷されていたので、部長さんが直接やってきた。
「ミドルウェアは何を使っておられますか?」いきなり敬語である。
「ミドルウェアって何ですか?」わたしは正直ミドルウェアという言葉を知らなかった。
部長の説明で、言っている意味が、WEBブラウザとデータベースの間に介在しているソフトだということがわかった。
わたしは商品名と価格を伝えた。おそらく失敗した全社のホームページソフトより安かったに違いない。
青くなっていた。
ところが、それから1年以上全社のホームページはそのままだった。
以前導入したものを置き換えていくパワーがシステム部門に無かったのだ。
わたしは、図に乗って、システム部門を無視して機能拡張に走り出した。
42歳頃の事だ。
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